マッサージ、鍼灸の手技について 

当院が使用する各種の手技についてご紹介します。

マッサージも鍼灸も、当院では特殊な手技はあまり使いません。

国家資格取得の際に必須とされる技術こそ、最も確実で安全と当院は考えます。

 

あん摩マッサージ指圧師の技法

押し、揉み、擦り、叩き、震わせ、引っ張る…、手指による様々な刺激で生体の変調を整えます。

手技にはそれぞれ名称がありますが、ここでは当院が保険適用の施術で多く用いる手技を2つと、運動法をご紹介します。

 

把握揉捏法

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画像は伏臥位で左腓腹筋外側を施術しています。

対象とする筋肉を手のひら全体でしっかり把握し、大きくゆっくりと揺り動かします。

把握揉捏という言葉から強く握って揉みほぐすものと誤解されがちですが、筋肉の形を決して握りつぶさずに揺り動かすことで、静脈血還流を促進します。

筋肉を他人の手で動かしているものとも言えます。

この手技では伸張刺激を受けるのは腱が主体となりますから、他動による間歇的な腱伸張刺激で関節拘縮にも効果を期待できます。

 

輪状母指揉捏法

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画像は側臥位で右脊柱起立筋外側縁を施術しています。

親指の腹を皮膚にしっかりと当て、手首を回して輪を描くように揉みます。

他の民間療法で見られるような皮下組織をずらして揉む技法ではなく、目標とする箇所に一点圧をかけつつ輪状の複合圧を加えます。

したがって長期臥床などで皮膚の弱っている患者様にも、安全に施術することができます。

 

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運動法(自動・他動)

外出が困難なため運動が不足してしまう患者様には、施術師による運動法が欠かせません。

患者様ご自身で動作をして頂くものを自動運動法と呼び、施術師が患者様のお体を動かすものを他動運動法と呼びます。

当院では他動運動法を主に行いますが、特に足関節の他動運動はどなたにでも行います。

関節の可動域を広げる目的もありますし、何よりも筋ポンプの作用を重視するためです。

 

※筋ポンプ作用とは

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人体を構成する細胞は酸素を取り入れてエネルギーを産み出します。肺でガス交換し酸素を含んだ動脈血が体の末梢まで行きわたることで、細胞は酸素を得ることができます。細胞に酸素を放出した動脈血は二酸化炭素や老廃物を含んで静脈血となります。静脈血は心臓へ戻り再び動脈血にならねばなりませんが、心臓のポンプの勢いだけでは静脈血を流すには足りないのです(特に下肢)。そのため筋肉が収縮すると膨らむ作用を利用して、筋肉で血管をしごいて静脈血を還流する仕組みが人体には存在します。それを筋ポンプ作用と呼びます。運動法やマッサージの手技(把握揉捏法など)は筋ポンプ作用を利用して血流の改善を図るのです。

 

 

 

  鍼灸師の技法

鍼は皮膚や筋肉など軟部組織への刺入や接触による機械的刺激を利用し、灸はモグサを燃焼させることによる温熱的刺激を利用します。

鍼灸ともに刺激に対する効果的な生体反応によって、生活機能の変調を整えます。

 

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当院では東洋医学の知見による経絡や経穴を用いるとともに、それに捕らわれずに圧痛や硬さのある部位への施術もよく行います。

鍼は多くても8か所程度しか打ちませんが、灸はときには20か所近く据えます。

当院で使用している鍼灸の道具を下記にご紹介します。

 

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左が一般的な鍼(毫鍼)です。当院では直径0.2mm長さ48mmのものをよく使います。

右上は円皮鍼です。直径0.15mm長さ0.6mmの極小の鍼がシールについており、皮膚に貼り付けて使います。

右下は消毒用の脱脂綿です。鍼を打つ前後には必ず皮膚を消毒します。

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鍼は使い捨てです。1回の施術後には専用の容器に入れて回収し、使いまわしはしません。

打つ深さは部位によって大きく異なりますが、当院では2cmを超えて打つことはめったにありません。

 

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左がモグサ(艾)です。ヨモギの葉を乾燥させて作ったもので、大変柔らかくすぐに燃え尽きてしまいます。

真ん中は灸施術専用の線香です。一般の線香とは違い、香りを抑えてあります。

右は灸点紙です。これを皮膚に貼り付けた上から灸を据えることで、火傷を防ぐことができます。

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モグサを米粒大までの大きさに整えた後、線香で着火します。

モグサを整える際に大きさや硬さを変えることで、熱が心地よく通る程度の熱さに自由に調節できます。

当院では1か所に3~5回くらい灸を据えます。かかとなど足の裏に施灸する際は灸点紙を使用しませんが、灸の痕はずっとは残りません。

 

介護施設等、火気厳禁の室内でお灸をする場合は、電気温灸器を使用します。

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  バッテリー駆動のため煙を出さずに温めることができます。施灸の痕がつかないこともメリットです。

通常のモグサを使うお灸よりは効果が出しにくいと当院は判断していますが、上手く使えば有効です。

 

 

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